脱脂をする理由
脱脂とは、金属やプラスチックなどの表面に張り付いた、油脂やホコリなどを取り除く作業のことを言います。
表面に油脂やホコリが付いていると、汚く見えるだけでなく、表面に加工などを行う際に不具合が生じます。
とくに、塗装を行うときには、表面に汚れが付着している状態ではNGです。
というのも、汚れの膜が張っていると、表面と塗装面とがうまく密着できなくなるからです。
塗装面の密着が弱いと、すぐ塗装が剥がれ落ちてしまったり、表面にサビなどが発生する原因となることがあります。
脱脂のやり方
アルコール(エタノール)
◆アルコール
簡単に脱脂できる薬剤として、アルコール(無水エタノールなど)があります。
アルコールには、油を溶かしてくれる働きがあります。
そのため、表面にこびりついた油膜などの汚れを軽く拭き取るだけで、簡単に落とすことができるのです。
また、揮発性が高く水分が含まれていないため、サビやすい金属面を脱脂するときにも便利です。
◆アルコールの選び方
アルコールを買うときには、消毒用アルコールではなく、無水エタノールなどを選んでください。
無水エタノールには水分が含まれておらず、アルコールの純度が高く作られています。
そのため、水拭きできないものの、清掃や汚れ落としをするときによく使われています。
ちなみに、消毒用エタノールは、無水エタノールに水を足して割って作られています。
◆使用時の注意点
アルコールは人体への害が少なく、気軽に扱うことができる薬剤です。
ただし、脱脂などで大量に使用する場合には、体に影響が生じることがあります。
臭いが気になる人はマスク、手荒れが気になる人はゴム手袋などで装備してから、作業するのがいいでしょう。
◆使い方
アルコールで脱脂するときには、布などに含ませてから拭き取って使います。
水分が含まれていないため、水拭きできないものの脱脂にとても便利です。
たとえば、パソコンや時計などの、精密機器の脱脂によく使われています。
また、拭いた後、水滴の跡が残らないため、ピカピカに仕上げたいガラスや、光沢が欲しい金属の脱脂にも重宝します。
眼鏡のレンズ面や、車の窓ガラスなどの拭き取りに使う人も多いです。
車のボディの脱脂にも使えますが、専用のクリーナーなどと比べると脱脂力は弱いです。
車に関して言えば、ステッカーや両面テープなどを貼り付けるために脱脂を行う分にはOKです。
反対に、塗装前の脱脂として使うには、あまり適していません。
中性洗剤・シャンプー
◆中性洗剤
簡単な脱脂ならば、中性洗剤が使えることがあります。
具体的には、台所用の食器洗い洗剤がこれに当たります。
食器洗い洗剤では、食器の油汚れを手早く落とすことができるため、他の素材の脱脂などにも活用できるというわけです。
中性洗剤は、脱脂力には定評があり、車のボディの脱脂にも充分利用することができます。
そして、中性洗剤は、肌に触れても大丈夫な成分でできているので、皮膚の弱い人でも使いやすいです。
◆シャンプーやボディーソープ
頭皮を洗うシャンプーや、体を洗うボディーソープなどにも、中性洗剤に近い成分のものがあります。
これらのシャンプーなどにも、少なからず脱脂効果はありますが、それ以上に皮膚を保護するための色々な成分が含まれています。
とくに、皮膚にダメージを与えないために、油分がプラスされている製品が多いです。
この場合では、たとえ脱脂に使用して油汚れが落ちたとしても、さらに油膜が付いてしまうことがあります。
そのため、シャンプーやボディーソープは脱脂に使うには向いていません。
◆使い方
中性洗剤を脱脂に使うときは、水で希釈してから布やスポンジなどに含ませて拭き取ります。
中性洗剤は水を含ませることで、油汚れを落とす効果が高まります。
ですので、素材の表面にそのまま中性洗剤を塗りたくるだけでは、脱脂力は期待できないです。
なお、この方法では水を含ませて拭き取り作業を行うため、水拭き可能な素材しか脱脂することはできません。
また、中性洗剤は泡立ちが良いものが多いため、最後は水などできれいに洗い流してください。
脱脂剤
◆脱脂剤とは
脱脂を行うための専用の脱脂剤も、数多く販売されています。
脱脂剤には、アルコール系のものと石油溶剤系のものの2種類があり、用途によって使い分けることができます。
使える素材や使い方も、脱脂剤により異なるため、事前によく確認してから購入することが大切です。
◆脱脂シャンプー
車のボディに使う脱脂剤として、脱脂シャンプーが販売されています。
脱脂シャンプーでは、車の研磨剤として使われる「コンパウンドをきれいに落とすこと」を目的としています。
そのため、頑固な油膜などもしっかりと脱脂することができます。
使い方は製品によりますが、希釈したものをスボンジなどに含ませてから、素材の表面を優しくこすって汚れを落とします。
いつもどおりの洗車のような感覚で脱脂ができ、最後に洗い流しができるので、比較的使いやすいです。
ただし、肌などに刺激が強い成分であるため、溶液の飛び散りには注意が必要です。
◆シリコンオフ
シリコンオフとは、石油溶剤系の脱脂剤であり、主に車ボディの脱脂処理に使われています。
スプレー式のシリコンオフでは、スプレーしてから、きれいな布で拭き取るだけで脱脂が完了です。
素材表面の油分を強力に除去してくれるので、塗装前の汚れの脱脂に最適です。
パーツクリーナー
パーツクリーナーとは、金属面に付いた汚れを落とすための洗浄剤です。
潤滑油やグリス、ワックスなどの濃厚な油膜を落とすことができるため、脱脂剤として利用することができます。
ベアリングなどの金属加工の過程で付着したグリスなどの油汚れを落とすために、金属加工業の工場や自動車整備工場などでよく使われています。
そのため、脱脂力はとても強力です。
しかし、素材によっては劣化などの可能性があるため、使用できないものがあります。
車の脱脂方法
注意点
◆手早く拭き取りを
脱脂剤を使った車の脱脂では、脱脂剤が乾かないうちに拭き取り作業を行うことが大切です。
独りで行う場合には、車のボディを細かく区切りながら脱脂と拭き取り作業を進めていくのがよいでしょう。
こすり忘れがないように、作業する部位の順番を決めてから、脱脂作業を始めましょう。
また、クロスを二つ手に持ち、脱脂作業をしたらすぐに拭き取るというように、手早く作業を進めていけるような工夫が大事です。
脱脂する面積が大きい車は、いかに早くムラなく作業できるかが、上手く脱脂する秘訣となります。
もし身近に手伝ってくれる人がいるのであれば、二人で一緒に行うと脱脂作業をスムーズに行うことができます。
◆専用のクロスを使う
洗車後のから拭きには、拭き取り専用のクロスを使用するしましょう。
タオルや雑巾などでも代用できますが、糸くずなどの繊維が残ることがあるため、塗装前の脱脂時には適していません。
脱脂のときと同様、マイクロファイバークロスを使うのがオススメです。
脱脂のやり方
◆準備
ここでは、脱脂剤にシリコンオフを使った脱脂のやり方をご紹介します。
・シリコンオフなどの脱脂剤
・マイクロファイバー素材のクロスを2枚
を用意しましょう。
クロスの一枚はシリコンオフを含ませ、脱脂作業を行うときに使います。
もう一枚は、シリコンオフを拭き取るための仕上げ作業に使います。
◆洗車
カーシャンプーなどを使用して、ボディの表面に付いたホコリや筒などの汚れを洗い流してください。
その後、車の表面をよく乾かします。
乾拭きなどで水滴を吸い取った後、しばらく放置して、水気が残らないようによく乾燥させましょう。
◆脱脂
マイクロファイバークロスを、拭きやすい大きさに折りたたみ、シリコンオフを適量含ませます。
含ませる量は、クロス全体が軽く湿る程度です。
スプレータイプの場合は、直接車の表面に吹き付けます。
それから、クロスで表面を軽くこすりながら、汚れを落としていってください。
ムラなく全体の脱脂ができたら、新しいクロスで拭き取ります。
きれいに拭き取りができたら終了です。
プラスチックの脱脂方法
注意点
脱脂剤の多くは、金属用のものであることが多く、プラスチックの脱脂には適していません。
金属専用の脱脂剤で、プラスチックを脱脂すると、表面が溶けるなど劣化することがあります。
脱脂剤を用いる場合には、プラスチックに対応した製品であることを確認してから使用するようにしましょう。
脱脂のやり方
◆中性洗浄剤
プラスチックでの脱脂剤として利用できるのが、プラスチック専用の中性洗浄剤です。
たとえば、EZクリーンという洗浄剤は、ガラスやプラスチック器具などの洗浄に特化した中性洗浄剤です。
使い方は、EZクリーンを水で希釈したものの中に、プラスチックなどを浸け置きするだけです。
中性洗剤に近い成分であり、簡単な油汚れならば脱脂することができます。
◆パーツクリーナー・プラスチックセーフ
パーツクリーナー・プラスチックセーフは、プラスチック素材と金属の混ざった混合パーツの脱脂に適した脱脂剤です。
通常のパーツクリーナーは金属専用となっているため、樹脂などの素材によっては劣化などが生じることがあります。
しかし、パーツの中には金属とプラスチックとが結合した混合パーツが多く含まれるため、両素材に対応したパーツクリーナーとして開発されました。
使い方は、表面にさっとスプレーするだけです。
スプレーの噴射力が非常に強く、洗浄力にも優れているため、拭き取りを行わなくても大丈夫です。