ソフビと塗装
ソフビと塗装
ソフビといえば、展示用や玩具用としての人形などに、よく使われています。
たとえば、アニメキャラクターをかたどった子供用のおもちゃや、マニア向けの精巧なフィギュアなどには、ソフビ製のものがたくさん。
これらは、子供が素手で触ったり、部屋に長く展示することがあるため、しっかりとした塗装を行う必要があります。
ソフビに合った塗装を行わないと、塗装面がベタ付いたり、塗料が剥がれる原因となってしまいます。
ソフビがベタベタしていたら
長く保管してあったソフビでは、表面がベタベタしていることがあります。
具体的には、手で触ると、ヌルッとまとわりつくような質感があり、見た目がテカっている状態です。
たとえば、日当たりのいい場所に長く展示してあったソフビや、密閉容器などに長く保管してあったソフビに、よく生じる現象です。
これは、ソフビが劣化することで、ソフビの中に含まれる可塑剤という成分が、徐々に表面に浮き出てくることが原因です。
このまま塗装してしまうと、ベタ付きが邪魔して、塗料がうまく表面に乗りません。
そして、ベタベタの層を挟むために、塗装が剥がれ落ちやすくなってしまいます。
塗装前の処理
水洗い、脱脂
◆中性洗剤
中性洗剤で水洗いを行い、ソフビの表面の汚れを取り除きます。
ソフビ製のほとんどのものは、水にザブンと浸けて洗うことができます。
バケツや洗面器の中に水を張り、食器洗い洗剤などの中性洗剤を少量溶かしてから、ソフビ製品を浸してください。
数十分間浸した後、手やスポンジなどで汚れを落とします。
目に付く汚れがあれば、歯ブラシを使って、優しくこすり落としましょう。
その後、流水で、洗剤をよく洗い流します。
◆キッチン用クレンザー
中性洗剤だけでは落ちにくい汚れには、キッチン用クレンザーを使うことができます。
キッチン用クレンザーでは、粉末状よりも、クリーム状のものがおすすめ。
シンクや鍋などを傷付けないよう、研磨剤が少なめでソフトに作られており、ソフビにも使いやすいです。
クレンザーを使うときには、固めのスポンジや歯ブラシなどで、軽く小刻みにこすって洗ってください。
タワシなど毛足が固いものを使ったり、強くこすり過ぎると、ソフビが傷付いてしまい、跡が残ってしまうことがあるので注意です。
また、クレンザーは、汚れのある箇所だけに使うのが安心。
クレンザーの研磨剤が、ソフビを傷付けてしまうリスクを考えると、ソフビの表面全体に塗りたくるのは避けたほうがいいでしょう。
クレンザーを使った後は、流水でよく洗い流しておきます。
◆耐水ペーパー
ソフビ表面を研磨するときには、耐水ペーパーが便利です。
原則、ソフビは傷付きやすいため、やすり掛けは避けたほうがいいです。
ただし、ソフビ表面にデコボコや傷があるなど、滑らかに整えたい箇所があるときには、耐水ペーパーで研磨を行ってください。
耐水ペーパーでは、目の細かいものを使うとツヤ感のある仕上がりに、目の粗いものを使うとマットな仕上がりになります。
ソフビの質感に合わせて、目の粗さを選びましょう。
研磨するときは、耐水ペーパーとソフビを、水に浸けながら作業します。
洗面器に張った水にソフビを浸し、小刻みに円を描くように、耐水ペーパーでこすってください。
最後に、ソフビから出た研磨カスを洗い流します。
◆乾燥
ソフビを水洗いしたり、水に浸けて研磨した場合は、しっかりと乾燥させます。
濡れたまま塗装を行うのは、絶対にNG。塗料の付きが悪くなり、剥がれ落ちなどの劣化の原因となります。
とくに、ソフビの人形などでは、手足や頭の接続部分などに、水滴が溜まりやすいです。
取り外せる部位については、いったん取り外してから、水洗いと乾燥を行うのがベストです。
プライマー
塗料の密着度を高めるには、プライマーという下地材を塗る方法があります。
ソフビに使うときは、いろいろな材質に対応できる、マルチプライマーやミッチャクロンマルチがおすすめです。
たとえば、溶液タイプのマルチプライマーでは、原液そのままか水で希釈したものを、刷毛などで塗り付けます。
厚塗りを避けて、一度か二度塗りで、薄く均一に塗ってください。
ソフビに使う塗料
Vカラー
◆Vカラーとは
ソフビの塗装には、ソフビ専用の塗料を使うのがお薦めです。たとえば、Vカラーと呼ばれる塗料は、ソフビに塗装を行うための専用カラーです。ソフビの質感に合わせて開発されており、柔らかくて弾力のある表面にも、しっかりと塗膜が付きます。そして、体に害のある鉛化合物などを含んでいないので、子どものおもちゃなどにも安心して使用できます。Vカラーは、DIYを取り扱うホームセンターや、模型店などのホビーショップなどで、350円程度で販売しています。
◆必要な道具
好みの色のVカラーとVカラー専用シンナーを、セットで用意します。
ちなみに、Vカラーは、単独で使わず、専用シンナーで希釈したものを使います。
この二つを混ぜ合わせるために、塗料を入れるためのお皿と、調整スティックが必要となります。
お皿などの道具は、使い捨てとなるため、100均のものなどで充分です。
調整スティックは、割り箸やマドラーなどでも代用できます。
そのほか、塗料を塗るための筆や刷毛が必要です。
◆塗装方法
・準備
Vカラーなどのソフビ専用カラーでは、石油やシンナーを使用しているため、臭いがとてもキツイです。
頭痛などを引き起こすことがあるため、直接臭いを吸い込まないようにするのが肝心です。
マスクなどで厳重に、鼻や口を覆っておきましょう。
臭いが苦手な人は、ホビーショップなどにある、塗装作業用マスクで防備すると安心です。
また、眼鏡やゴーグルを掛けておくと、目にしみるような感覚を和らげることができます。
・希釈
Vカラーを、Vカラー専用シンナーで希釈します。
Vカラーと専用シンナーの割合は、だいたい1対2か、1対3ぐらい。筆に塗料を含ませたときに、もったりと重たくなく、程良い粘着性を感じるようになればOKです。
慣れないうちは、薄めに希釈したほうが、ムラになりにくく塗りやすいです。
・塗装
塗料を含ませた筆で、ソフビの表面に塗装を行います。
筆でトントンと押さえるようにしながら、色を乗せていきます。
色の強弱が出ないよう、均等に色が付くように筆を動かしていきましょう。
パーツの接続部分やくい込んだ箇所などは、塗り残しがないよう、筆先を潜らせて色を乗せてください。
・乾燥
塗装後はよく乾かします。
Vカラーは、塗料の中では乾きが早く、数十分程度で乾燥できます。
二度塗り、三度塗りを行うときは、先に塗った塗料が乾いてから行ってください。
しっかりと塗料が乾いたら完成です。
Mr.カラー
◆Mr.カラーとは
Mr.カラーは、ソフビに対応している、ラッカー系の塗料です。
模型塗料として人気のある製品であり、ホビーショップなどで販売されています。
Mr.カラーの魅力は、色の品揃えが豊富であることと、発色が美しいことです。
模型用の塗料なので、ツヤ感や色のバランスが美しく、見映えのする仕上がりとなります。
◆塗装方法
Mr.カラーも、専用シンナーで希釈して使います。
Mr.カラーと専用シンナーとを、1対1~3で溶いたものを、筆に取って塗装してください。
一度に厚塗りするよりも、薄く塗ったものを、二回塗り重ねるほうが、塗装の持ちが良くなります。
ムラなく塗れたら、よく乾かします。
タミヤアクリル
◆タミヤアクリルとは
タミヤアクリルなどの水性アクリル系カラーも、ソフビの塗装に使うことができます。
とくにタミヤアクリルは、ホビーショップなどの専門店だけでなく、ショッピングモールのおもちゃコーナーなどでも売っており、手に入りやすい塗料です。
そして、模型用の塗料だけあって、色の種類が多く、発色が鮮やかです。
さらに、臭いがそれほどキツくないので、シンナー臭が苦手な人でも、比較的使いやすいです。
ただし、VカラーやMr.カラーに比べると、塗膜が強くなく、塗装が長持ちしないというデメリットがあります。
また、乾燥するまでが遅いため、乾かすのに時間が掛かります。
塗装方法
タミヤアクリルは、薄めずにそのまま、塗装に使うことができます。
しかし、そのままだと粘度が高く、筆に含ませにくいため、希釈して使うことが多いです。
希釈するものとしては、水や専用アクリルシンナーなどが使用できます。
ただし、慣れないうちは、専用アクリルシンナーで希釈したほうが、混ざりがよく、仕上がりもきれいです。
塗装の落とし方
塗装を落とすときには、希釈に使う専用シンナーが利用できます。
塗装に使用した塗料に応じた、専用シンナーを用意してください。
古布などに専用シンナーを染み込ませ、塗装面にしばらく押し当ててから、キュッキュッと拭き取ります。
なお、専用シンナーは肌への刺激が強いため、ゴム手袋などをはめてから扱うようにしましょう。