塗装前の処理
汚れ落とし・脱脂
塩ビに塗装を行う前には、汚れ落としや脱脂が必要です。
水拭きなどで、よく汚れを落としてください。
たとえば、塩ビ製の雨樋や手すりなど、外に設置されているものには、長年のホコリや土汚れなどがこびり付いています。
表面に付いた汚れをよく取り除き、塩ビ素材が全面に露出している状態に整えましょう。
少しでも汚れが残ったまま、塗装を行ってしまうと、その部分を原因にして、塗装が剥がれ落ちてしまうことがあります。
なお、グリスなどの油汚れが付着している場合は、中性洗剤を使って、脱脂を行ってください。
中性洗剤では、キッチン用の食器洗い洗剤が利用できます。
脱脂の後は、クロスなどで水分を取り除き、よく乾かしておきます。
やすりがけ
紙やすりやサンドペーパーを使って、やすりがけを行います。
やすりがけを行うと、塗装が密着しやすい下地に整えることができます。
指でなぞったときに、塩ビの表面がガサガサとした質感になるまで、サンドペーパーなどで磨いてください。
なお、やすりがけを行っておかないと、塗装の付きが弱くなり、ちょっとした衝撃などで塗装面が剥がれ落ちることがあります。
やすりがけの後は、クロスなどで水拭きを行い、研磨で生じた粉をきれいに取り除いておきます。
密着剤、プライマー(ミッチャクロンマルチ)
やすりがけの後には、密着剤を塗っておくと、塗装の密着性をより高めてくれます。
カラースプレーなどの塗装の付きが良くなり、剥がれにくい仕上がりとなります。
塩ビ以外にも、ガラスやタイルなどのつるつるした素材に塗装するときには、密着剤が必需品です。
たとえば、DIYにお薦めなのが、スプレータイプのミッチャクロンマルチです。
汚れを落とした後に、スプレーでさっと吹きかけるだけで、塗装前の準備はOK。面倒なやすりがけが不要となるので、作業時間がグッと短縮できます。
保護
マスキングテープなどを使って、塗装したくない部分を保護します。
塗装する塩ビ素材のうち、塗装したくない箇所を、マスキングテープなどで覆ってください。
マスキングテープを好きな形に切って貼ると、塗装後に模様を浮き出させることができます。
二度塗りをする場合などは、二色使いの塗装に仕上げることも可能です。
また、雨樋などの場合には、外壁などに塗装が付かないよう、ブルーシートなどで覆っておきましょう。
覆うものは、ゴミ袋を切り開いたものや、汚れてもいいレジャーシートなどでもOKです。
塩ビに使える塗料
ラッカースプレー
◆ラッカースプレーとは
さまざまなカラースプレーがある中で、一番、塗装力が強いとされるのがラッカースプレーです。
ラッカースプレーでは有機溶剤を成分に使っており、表面にぴったりと密着して塗装を行うことができます。
塗装が強く剥がれにくいうえ、乾燥が早く、発色がきれいだというメリットがあります。
◆塩ビとの相性
ラッカースプレーではシンナーを使用しているため、塩ビとの相性が良いとは言えません。
シンナーを直接、塩ビ素材に掛けると、塩ビの表面が溶けたようになります。
これは、シンナーの成分が、塩ビの可塑剤に結びつくことで、内部から可塑剤が溶け出してしまうからです。
こうなると、塗装した後がベタベタとして、なかなか乾かなくなってしまいます。
そのため、塩ビの塗装にラッカースプレーを使うときには、下塗りという作業が必要です。
アクリルスプレー
◆アクリルスプレーとは
アクリルスプレーには、水溶性のものと、油性のものとがあります。
どちらも、塩ビの塗装に使えるものが多いです。
とくに、水溶性アクリルスプレーでは、水性多用途スプレーという名前で売られており、あらゆる素材に塗れることを強みとしているものがあります。
水性多用途スプレーは、もちろん、塩ビ素材にも塗装することができます。
紫外線に強いので、屋外で使うものにも安心して塗装できるでしょう。
ちなみに、水溶性と付いていますが、乾燥後は耐水性があり、雨などに濡れても大丈夫です。
◆水溶性アクリルスプレーの利点
水溶性アクリルスプレーの特徴のひとつが、乾くまでは水性、乾いてからは耐水性ということです。
つまり、塗装が乾くまでは、水で洗い流すことができます。
そのため、塗装の途中で吹き付けに失敗したり、思った色味と違ったときなどは、水で洗い落としてから塗装をやり直すことができます。
また、水溶性アクリルスプレーのもうひとつの特徴に、下地を侵食しないということがあります。
たとえば、塩ビに使用したときも、可塑剤が溶け出すような心配がありません。
下の塗装を侵食しないので、他のカラースプレーを塗った後に、重ね塗りをすることも可能です。
ウレタンスプレー
ウレタンスプレーは、プラスチックの塗装によく使われる塗料です。
塩ビとも相性が良く、使いやすい塗料です。
光沢感のあるきれいな発色が特徴で、色や質感にこだわって塗装したいときにオススメです。
ただし、ウレタンスプレーには、紫外線に対して弱いという特徴があります。
紫外線が当たるものへの塗装となると、耐久性がめっきり落ちてしまうのが欠点です。
そのため、雨樋などの塗装に使うには、あまりお薦めできません。
ペンキ
◆ペンキとは
ペンキには、油性と水性の2種類があります。
DIYなどで手軽に扱うには、水性ペンキが使いやすいです。
臭いも少なく、乾くまでは洗い流せるので、ペンキ初心者でも大丈夫。
ただし、広範囲に塗るときには、刷毛の扱いに慣れていないと、美しい仕上がりにならないことも。
狭い部分だけや、小さめのものなどを塗るときには便利です。
◆塩ビに使うとき
下地材などで下塗りを行った後に、水性ペンキを塗ります。
いちど、テスト塗りや試し塗りをして、テクスチャーの硬さなどを確認してください。
刷毛に適量のペンキを含ませて、ゆっくりと滑らせながら塗っていきます。
ポスターカラーなどを塗るときと近い感覚で、塗り進めていくことができるでしょう。
塗り残しがないかを確認して、よく乾いたら完成です。
マーカー
油性マーカーやポスターカラーなども、塗装に活用することができます。
とくに、小さな箇所だけを塗装するときには、マーカー類がとても便利。
ペンでサクッと塗れるので、不器用な人でも失敗しにくいです。
ただし、色ムラなどが出やすく、仕上がりも美しくならないので、広い範囲を塗るには適していません。
また、水性マーカーは、耐水性がないので使用できません。
塗料について補足
ラッカースプレーなどは、ホームセンターやショッピングサイトなどで購入することができます。
なお、ホームセンターなどでは、ラッカースプレーや水溶性アクリルスプレーなどをまとめて、カラースプレーと分類しています。
ちなみに、カラースプレーの面白いところは、いろいろな質感の塗装ができることです。た
とえば、アイアン調やストーン調のスプレーを使えば、素材に吹きかけるだけで、鉄製や岩石に見える仕上がりになります。
中身は塩ビながら、高級感のある見た目となるので、DIYにとても重宝。
メッキ調やメタリック調のスプレーも、塩ビとはひと味違う質感が楽しめるでしょう。
屋外に使うものでは、蛍光や夜光対応のスプレーで、存在感を際立たせるのも有りです。
カラースプレーでの塗装方法
下塗り
◆使う道具
まず、塗装する塩ビに、下塗りを施します。塩ビの下塗りには、密着剤や下地材を使用します。たとえば、先に紹介した、ミッチャクロンマルチなどの密着剤のほか、ジェッソなどの下地材がお薦めです。ちなみに、スプレータイプのものよりも、刷毛などで塗る液体タイプのもののほうが、しっかりとした下地が作れます。
◆下塗り方法
刷毛を使った下塗りでは、下地材を薄く均しながら塗っていきます。刷毛に含ませた下地材を、刷毛をさっさっと滑らせていきながら、塗り残しのないように均等に塗ってください。ちなみに、下地材を使って、表面に変化をつけるワザがあります。たとえば、ぼてっと厚塗りにした箇所をわざと作って、表面をボコボコとさせたり、刷毛の塗り跡を強調させて模様を作るなど、いろいろな質感を作り出すことができます。
塗装
◆塗装前の準備
下地材がよく乾いたら、塗装を行います。
カラースプレーの吸い込みや汚れが気になる人は、マスクやビニール手袋などで装備しておきましょう。
雨樋などの大きなものに塗装するときには、衣服などにスプレーが飛び散ることがあります。
100均の雨カッパなどを着てから行うと、汚れを防ぐことができ安心です。
また、スプレーを扱うときには、換気を良くしておくことが大切です。
できるだけ屋外か、ベランダや車庫などの半屋外で行うようにしましょう。
◆テスト塗り
カラースプレーに手慣れていない人は、まずテスト塗りをしておくのがオススメです。
カラースプレーの種類によって、噴射力や吹き出しの量に、若干の違いがあります。
同じ塩ビの素材で、不要なものを用意しておき、塗装の練習を行うのがいいでしょう。
何度かテストを行うことで、スプレーするときの距離や、移動させるときの速さなどを、自分で調整することができます。
なお、この時点で、塩ビが溶け出すなどの違和感を感じたときは、塗装に使うのを止めましょう。
◆塗装
適度に距離を離してから、カラースプレーを吹きかけます。
同じ位置に停止せず、徐々にスプレーを動かしていくのが、きれいに塗装するコツです。
同じ箇所を集中的にスプレーしてしまうと、ダマができるなどして、仕上がりが汚くなります。
スプレーする順番を大まかに決めておき、上下や左右などの動き方を統一して、塗装を進めていくのがいいです。
スプレーの動かし方を決めておくと、ムラや塗り残しを防ぐことができます。
乾燥
最後に、塗装したものをよく乾かします。
屋外で塗装を行った場合は、雨などで濡れることがないように、屋根のある場所に移動しておきましょう。
臭いがこもらないよう、風通しのいい場所で乾燥させるのがいいです。
手で触ってもベタつきを感じなくなったら、塗装の完成です。