塗装前の処理
取り外し
バイクからマフラーを取り外します。
バイクに取り付けたままの状態でも、マフラーだけをさっと塗装することはできます。
しかし、塗料が他の部品に付いてしまうリスクを考えると、マフラーを取り外してから作業するほうが安心です。
洗浄
マフラーに付いている泥などの汚れを、洗い流します。
マフラーを取り外した場合は、ジャブジャブと水洗いします。
バイクに取り付けたまま洗う場合は、マフラーから水が入らないように注意しましょう。
マフラー管の中に、雑巾などを丸めたものを突っ込んでおくと、水が入りにくくなります。
脱脂
◆脱脂
塗装前には、マフラー表面の脱脂を行います。
バイクのマフラーは、ガソリンやワックスなどの油汚れが付着しやすい場所です。
そのため、脱脂専用のクリーナーを使って、しっかりと油分を落とす必要があります。
◆脱脂クリーナー
マフラーの脱脂には、パーツクリーナーやシリコンオフなどの、脱脂クリーナーが使用できます。
ただし、パーツクリーナーは、金属面に使用するためのものなので、すでに塗装してあるマフラーには刺激が強く、不向きです。
材質や塗装が分からないマフラーには、シリコンオフを使うのが無難です。
◆やり方
水洗いした後のマフラーは、しっかりと水気を乾かしてください。
マフラーの表面に、シリコンオフを塗ってから、マイクロファイバーなどのクロスでよく拭き取ります。な
お、サンドペーパーやサビ取りクリーナーなどを使用する場合は、サビ落としを行った後に、シリコンオフでの脱脂に取り掛かってください。
サビ落とし
◆サンドペーパー
・使えるサンドペーパー
金属表面にサビが浮き出ているときには、サンドペーパーなどでサビ落としをします。
マフラーを傷つけないよう、できるだけ目の細かいサンドペーパーを使ってください。
ただし、サビが多いなど、マフラーの状態が良くないときには、300番程度の目の粗いものから始めたほうが、サビなどを落としやすいです。
その後、400番から600番へとサンドペーパーを変えて、滑らかに仕上げてください。
・やり方
サンドペーパーは、人差し指と中指に当てて、指ではさんで持ちます。そして、サビのある箇所だけを削るように、サンドペーパーを小刻みに動かしながら磨いてください。最後に、削りカスを洗い流すか、水拭きで拭き取ってから、乾いた布で水分を拭き取ります。
◆サビ取りクリーナー
・サビ取りクリーナーとは
市販のサビ取りクリーナーを使うと、より楽にサビ落としができます。
クリーナーの化学成分が、マフラー表面のサビにしっかりと浸透し、強力に分解して落としてくれます。
なお、サビ取りクリーナーは、ホームセンターやショッピングモールなどで、千円前後で販売しています。
バイク専用である必要はなく、自転車やキッチン用品などに対応したもので充分です。
ちなみに、マフラーのサビ落としでは、クリーム状やジェル状など、液垂れしにくいタイプのものが使いやすいです。
・ブラシ
サビ取りクリーナーでサビ落としをするときには、ブラシを用意してください。
ブラシは、使い古しの歯ブラシや、靴磨き用のブラシなどが利用できます。
しかし、頑固にこびり付いたサビには、サビ取り専用のワイヤーブラシを使うのがお薦めです。
ワイヤーブラシは、ホームセンターなどで数百円で販売されており、100均のDIYコーナーなどでも手に入れることができます。
ナイロン製のブラシよりも、格段にサビが落ちるので便利です。
ただし、頑固に削りすぎると、マフラーが傷付いてしまうので注意しましょう。
・やり方
サビ取りクリーナーを、サビの気になる部分に塗ってから、数分ほど放置します。
その後、ブラシで掻き取るようにして、サビを落としていきます。
いちどで落ちない場合には、クリーナーを付けて放置してからブラッシング、という作業を何回か繰り返します。
最後に、掻き出したサビとクリーナーを、雑巾などできれいに拭き取ってください。
マスキング
塗装したくない箇所は、マスキングテープなどで覆っておきます。
たとえば、ガスケットをはめる部分に塗装すると、微妙にガスケットが入りにくく感じることがあるそう。
気になる人は、ガスケット部分などをマスキングしておくのが安心です。
塗装環境の設定
屋外や半屋外など、風通しのいい場所を選んで、塗装を行います。
地面に養生シートなどを敷き、そこにマフラーを置いて、塗装を行いましょう。
養生シートの代わりに、ダンボールを切り開いたものや、古新聞紙をたくさん敷き詰めたものが利用できます。
道具と塗装方法
マフラーの塗装
バイクのマフラーは、エンジンを掛けると、数百℃まで温度が上がります。
そのため、通常よく使われている、カラースプレーなどの塗料で塗装するのはNGです。
エンジンの熱に塗料が耐えきれず、焼けて色が無くなってしまいます。
塗装が残っていれば、サビ止めの効果などは果たしますが、せっかく塗装した色合いや質感を、維持することはできません。
耐熱スプレー
バイクのマフラーを塗装するときには、耐熱スプレーがお薦めです。
耐熱スプレーは、最高六百℃程度の温度まで耐えることができるので、マフラーにも充分対応できます。
マフラー表面が高熱を発していても、焼き付けなどの変色がなく、塗装面が剥がれ落ちにくい作りとなっています。
ソフト99塗料 耐熱ペイント
◆ソフト99塗料 耐熱ペイントとは
バイクのマフラーなど、高温になる箇所の塗装に適した、耐熱性のシリコン樹脂塗料です。
スプレータイプなので、液垂れしにくく塗装しやすいです。
なお、こちらの塗料は、スプレー後にいちど熱を加えることで、塗装面が硬化します。
ですので、熱で硬化させるまでは、塗装面はまだまだ柔らかい状態です。
手で触れるなどの接触で、簡単に塗装が落ちてしまうので注意しましょう。
◆塗装方法
・塗装
脱脂を行った後に、耐熱ペイントを吹き付けます。
使用する前には、スプレー缶をカシャカシャとよく振り、塗料をかき混ぜておいてください。
マフラー表面から、15㎝~25㎝離したところでスプレー缶を持ち、塗料を吹き付けます。
マフラーと平行に移動させながら、均一になるように塗装を行ってください。
いちどに厚塗りするのではなく、薄く乗せることを数回繰り返して、重ね塗りをするほうがきれいに仕上がります。
なお、重ね塗りをする場合は、一回塗った後は5分程度おき、軽く乾いてから二回目を塗ってください。
・乾燥
塗装が終わったら、常温で一時間以上置いて、乾燥させます。
乾燥後、液だれなどでデコボコした箇所があれば、サンドペーパーで軽く削り、平らに整えてください。
・硬化
塗装面に熱を加えて硬化させます。エンジンを掛けて、一時間以上、バイクを走行させます。
無理やり走行しなくても、アイドリングするだけでもOKです。
こうすることで、マフラーに高熱が伝わり、塗装面がしっかりと硬化します。
硬化中に、煙がモクモクと出ることがありますが、一時的なものなので心配要りません。
なお、硬化後は、若干、ツヤが消えてマットな質感になります。
ヤマハ耐熱塗料 耐熱クリアー
◆ヤマハ耐熱塗料 耐熱クリアーとは
塗装後のマフラーの質感を、もっとツヤっぽく仕上げたいときには、クリアスプレーを吹き付けてみましょう。
ヤマハの耐熱クリアーは、マフラーの高温にも充分耐えることができる、耐熱スプレーです。
テカテカとした光沢が出るので、カラーの耐熱スプレーを掛けた後の上塗りにちょうどいいです。
もちろん、耐熱クリアーだけで使用するのもOK。
劣化防止や防サビ効果があるので、サビ落としの後にそのまま吹き付けるのもお薦めです。
◆塗装方法
脱脂やサビ落としの後、もしくは、耐熱カラースプレーなどを吹き付けた後などに、耐熱クリアーを吹き付けて塗装します。
塗装後は、熱を加えることで、塗装面が硬化します。
しばらく乾かしてから、15分程度、アイドリングか走行を行ってください。
業者に依頼
料金
◆業者の料金
バイクの塗装は、車の塗装ほど料金が高くありません。
業者や、パーツごとに価格は変わりますが、マフラーの塗装ならば、だいたい数千円から一万円以内で依頼することができます。
◆DIYの料金
DIYで塗装を行う場合は、耐熱スプレーやサンドペーパーなど、いろいろな道具が必要となります。
たとえば、耐熱スプレーが千円から二千円程度、シリコンオフが千円程度することを考えると、経費もそれなりに掛かります。
そのため、常日頃から、シリコンオフやサンドペーパーを常備しているなど、塗装に手慣れた人でないと、費用面でのお得感はないかもしれません。
対応
バイクのパーツの塗装は、バイク専門店などで取り扱っています。
なお、板金塗装工場などでも、バイクのパーツ塗装について対応できることがあります。
ただし、板金工場は主に、車の板金塗装を専門に行っているため、バイクの塗装に対応できない場合も多いです。
そのため、地方都市などでは、バイクの塗装を引き受けてくれる業者は、案外と少ないことがあります。
仕上がり
業者に塗装を依頼すると、プロの仕上がりが期待できます。
しっかりとサビを落とし、ピカピカに塗装を施した仕上がりは、まるで新品のよう。マフラーなど、一部のパーツだけが傷んでいる場合は、費用も安く済むため、業者に塗装を依頼するのがお薦めです。
しかし、DIYで塗装を行う場合には、オリジナリティあふれる塗装ができるという魅力があります。
たとえば、赤色や黒色のマフラーなど、思い切った色にチャレンジできるのも、自分で行う塗装ならでは。
DIYでの塗装では、より個性的で、愛着のあるマフラーに仕上げることができるでしょう。